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全⾝型重症筋無⼒症患者への
ユルトミリス®投与における質問集(FAQ)

ユルトミリス®投与に関するよくある質問をまとめました

疾患

Q
重症筋無力症(MG)はどのような疾患ですか?

重症筋無力症(MG)とは

MGは神経筋接合部のシナプス後膜上にあるいくつかの標的抗原に対する自己抗体の作用により、神経筋接合部の刺激伝達が障害されて生じる自己免疫疾患です1)

疫学

日本では、2018年に実施された神経免疫疾患に関する調査研究班と難治性疾患の疫学に関する調査班との合同で行われた調査により、2017年に受診したMG患者数は29,210人で、有病率は人口10万人あたり23.1人と推定されました1)
なお、令和2年度末現在、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は25,416件と発表されています2)
また、1990~2014年の疫学研究に関する文献レビューでは、全世界におけるMGの有病率は人口10万人あたり中央値で10人(範囲5.35~35人)と推定されました3)

症状

最も特徴的な症状は骨格筋の易疲労性を伴う筋力低下です。運動を繰り返し、筋収縮を続けることにより筋力は低下し、休息によって回復します1,4)。初発症状として眼瞼下垂や複視などの眼症状が高頻度に発現し、MG患者の85%にみられます(海外データ)5)。15%の患者では、球筋(口や喉の筋肉)の筋力低下がみられ、結果、嚥下障害、構音障害、咀嚼障害などを生じます(海外データ)5)。この他、初発障害としてみられるものに、頸部筋、呼吸筋、四肢遠位筋の筋力低下があります5,6)

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引用
1) 日本神経学会 監,重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン作成委員会編.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022,南江堂,2022.
2) 難病情報センターホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/2022/03/koufu20212.pdf)(2022年7月アクセス)
3) Deenen JCW, et al. J Neuromuscul Dis. 2015; 2(1): 73-85.
4) Conti-Fine BM, et al. J Clin Invest. 2006; 116(11): 2843-54.
5) Meriggioli MN, et al. Lancet Neurol. 2009; 8(5): 475-90.
6) Li Y, et al. Cleve Clin J Med. 2013; 80(11): 711-21.

Q
抗AChR抗体陽性MGにはどのような特徴がありますか?

MG全体の約80~85%が抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性と報告されています1,2)。したがって、抗AChR抗体陽性MGでは、MG患者でみられる一般的な症状を呈すると考えられます。ただ、原因となる自己抗体の種類により筋力低下の分布が異なることがわかってきており、抗AChR抗体陽性MG患者では抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体陽性MG患者に比べ、頭頸部や上肢の筋力低下がみられやすい傾向があるようで3,4)

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引用
1) 本村政勝. 臨床神経学. 2011; 51: 872-76.
2) 辻省次 総編集. 免疫性神経疾患 病態と治療のすべて(中山書店)p96, 359.
3) Gilhus NE and Verschuuren JV. Lancet Neurol. 2015; 14(10): 1023-36.
4) Hujibers MG, et al. J Intern Med. 2014; 275(1): 12-26.
5) 日本神経学会 監, 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン作成委員会 編.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022.

Q
抗AChR抗体陽性MGの神経伝達障害の機序に、補体はどのように関わっていますか?

抗AChR抗体陽性MGでは、以下の3つのメカニズムにより、神経伝達障害が起こっていると考えられています。
・AChとAChRとの結合阻害1,2)
・AChR崩壊促進2)
・補体介在性運動終板の破壊2,3,4)

この中で、補体が関与する機序が「補体介在性運動終板の破壊」です。「補体介在性運動終板の破壊」は、自己抗体がAChRに結合し、さらに補体C1複合体が自己抗体のFc領域に結合することで、古典経路が活性化されます。その後、補体C3やC5などの多段階のプロセスを経て、シナプス後膜上に補体タンパクC5b~9で構成される膜侵襲複合体(MAC)が形成されます。MACにより神経筋接合部における運動終板が破壊されることでAChRが減少し、神経伝達障害が引き起こされます5,6)

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引用
1) Howard JF Jr, et al. Muscle Nerve. 2013; 48(1): 76-84.
2) Conti-Fine BM, et al. J Clin Invest. 2006; 116(11): 2843-54.
3) Kusner LL, et al. Ann N Y Acad Sci. 2012; 1274(1): 127-32.
4) Meriggioli MN, et al. Lancet Neurol. 2009; 8(5): 475-90.
5) Rother RP, et al. Nat Biotechnol. 2007; 25(11): 1256-64.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsの社員 及びAlexion Pharmaceuticalsより講演料を受領している者などが含まれる]
6) Walport MJ. N Engl J Med. 2001; 344(14): 1058-66.

Q
抗AChR抗体陽性MG以外のMGにも補体の関与はありますか?

重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022では、抗AChR抗体のほか、抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体もMGの病原性自己抗体とされています1)。わが国では、MG全体の約80~85%が抗AChR抗体陽性で、約5%が抗MuSK抗体陽性と推定されています1)

抗AChR抗体陽性以外のMGで、補体の関与が明らかになっているものはありませんが、抗MuSK抗体は主にIgG4であり、補体と十分に結合しないため、抗MuSK抗体陽性MGでは病態機序に補体の関与は少ないことが推察されています2)。病態機序として、MuSK抗体IgG4がagrin/LRP4/MuSKのシグナルを障害することによってAChRの凝集が抑制されるためと推測されています1)

なお、抗LDL受容体関連蛋白質4(LRP4)抗体が第3の病原性自己抗体の候補とされ、検討されてきましたが、疾患特異性が低いことなどにより、同ガイドラインでは「現時点で病原性自己抗体とは断定できない」と判断されました1)

引用
1) 日本神経学会 監, 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン作成委員会 編.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022.
2) Conti-Fine BM, et al. J Clin Invest. 2006; 116(11): 2843-54.

Q
MGの重症度やQOLの評価にはどのような基準がありますか?

MG症状の重症度クラス分類には、2000年にMGFA(MG Foundation of America)により提唱されたMGFA分類が、MG重症度の定量的な評価基準には、1999年に発表されたMG-ADLスケール、2000年に発表されたQMG(Quantitative MG)スコア、2008年に発表されたMG compositeスケールがあります1)。また重症度に加え、MGに特異的なQOLスケールであるMG-QOL15が2008年に発表されており、2010年にはその日本語版(MG-QOL15-J)が発表され、信頼性及び妥当性が検証されました1)。さらに2016年には、日米英共同でMG-QOL15の改訂版であるMG-QOL15rが発表され、日本語にも翻訳されています1)

MGFA分類2)

現在までの最重症時の状態で、最も軽症なClass I から最重症のClass Vに分類する分類法です。このため、治療の評価には用いるべきではない点に注意を要します。なお、MGFA分類は、指定難病の臨床調査個人票の重症度分類に関する事項に使用されています3)

MG-ADLスケール4)

患者の自己申告を元に記載します。他の評価基準と比べ、比較的簡単に用いることができます。患者の自己申告であることから、QOL評価との相関が高いことが報告されています。

QMG(Quantitative MG)2)

定量的な重症度評価の一つです。20分程度時間を要します。易疲労筋の検出感度は高いとされています。

MG compositeスケール5)

MG-ADLスケールやQMGの長所と短所を踏まえて考案されたスケールです。

MG-QOL156)

MG治療の効果判定においてQOLの評価も重要であることから作成された、MG特異的QOLスケールです。

MG-QOL15-J7)

MG-QOL15の日本版です。日本では言語や生活習慣が欧米と大きく異なるため、MG-QOL15の日本語版が作成されました。

MG-QOL15r8)

MG-QOL15の質問項目や評価尺度を改訂したスケールで、日本語のほか、11ヵ国以上の言語に翻訳されています。

MG-QOL15r-J

MG-QOL15rの日本語版です。

引用
1) 日本神経学会 監, 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン作成委員会 編.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022.
2) Jaretzki A 3rd, et al. Neurology. 2000; 55(1): 16-23.
3) 難病情報センターホームページ(http://www.nanbyou.or.jp/entry/272)(2022年7月アクセス)
4) Wolfe GI, et al. Neurology. 1999; 52(7): 1487-9.
5) Burns TM, et al. Muscle Nerve. 2008; 38(6): 1553-62.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsより 謝礼を受領している者などが含まれる]
6) Burns TM, et al. Muscle Nerve. 2008; 38(2): 957-63.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsより 研究助成金を受領している者などが含まれる]
7) Masuda M. et al. Muscle Nerve. 2012; 46(2): 166-73.
8) Burns TM, et al. Muscle Nerve. 2016; 54(6): 1015-22.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsより 研究助成金を受領している者などが含まれる]

Q
MGにはどのような治療がありますか?

MGの治療法には、胸腺摘除、経口ステロイド、ステロイドパルス療法、経口ステロイド薬以外の免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬など)、免疫グロブリン静注療法(IVIg)、血液浄化療法、分子標的治療薬(ソリリス®、ユルトミリス®など)などがあります1)

注)本邦では一部の免疫抑制薬及び免疫グロブリン製剤にはMGの適応はありません。

引用
1)日本神経学会 監, 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン作成委員会 編.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022.

ユルトミリス®とは?

Q
ユルトミリス®はどのような作用を有していますか?

ユルトミリス®はソリリス®と同様、抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤で、補体C5に高い親和性をもって特異的に結合し、C5a(炎症誘発性アナフィラトキシン)及びC5bへの開裂を阻害し、C5b-9からなる膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制すると考えられます1)。ユルトミリス®は、これらの作用がソリリス®と比べて長時間持続することが特徴です(→詳細は「Q:ユルトミリス®は、なぜ長時間作用するのですか?」を参照)。

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引用
1) Rother RP, et al. Nat Biotechnol. 2007; 25(11): 1256-64.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsの社員及びAlexion Pharmaceuticalsより講演料を受領している者などが含まれる]

Q
ユルトミリス®は、なぜ長時間作用するのですか?

ユルトミリス®はソリリス®[一般名:エクリズマブ(遺伝子組換え)]の誘導体ですが、ソリリス®に比べて長時間作用するように設計されました。

基本構造

ユルトミリス®はラブリズマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換えヒト化IgG2/G4モノクローナル抗体で、マウス抗ヒト補体C5抗体の相補性決定領域、ヒトフレームワーク領域及びヒトIgG由来定常領域から構成されています。以下のように、エクリズマブの重鎖に4個のアミノ酸を置換することにより、エクリズマブに比べて長時間作用することが可能になりました。
・重鎖可変領域(CDR)の27番のTyr及び57番のSerをHisに置換→pH6.0で抗体:C5 複合体を不安定化させる
・第3の重鎖定常領域ドメイン(CH3)の429番のMetをLeu、435番のAsnをSerに置換→pH6.0でヒト胎児性Fc受容体(FcRn)との結合を強化させる

* FcRnは、抗体と結合し、抗体を細胞内から血液中へくみ出す受容体タンパク質

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ユルトミリス®(ラブリズマブ)が長時間作用するメカニズム

ソリリス®、ユルトミリス®とも、C5と結合した後にエンドソームに取り込まれます。エンドソームに取り込まれると、ソリリス®はリソソームにより分解されてしまいます。一方、ユルトミリス®は上記の構造を有しているため、エンドソームに取り込まれた後、酸性(pH6.0)環境下でC5と解離し、遊離抗体としてFcRnと結合して血管内にリサイクルされます。その結果、終末相消失半減期が延長されるため、ソリリス®と比べて長時間作用することが可能になりました1,2)

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引用
1)Sheridan D, et al. PLoS One. 2018; 13(4): e0195909.[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。 本論文の著者はAlexion Pharmaceuticalsの社員及び株主である]
2)Röth A, et al. Blood Adv. 2018; 2(17): 2176-85.[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion Pharmaceuticalsの社員及びAlexion Pharmaceuticalsより研究助成金などを受領している者が含まれる]

Q
MG患者を対象とした臨床試験について教えてください

全身型MGに対するユルトミリス®の適応は、国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]の結果が、承認時評価資料とされました1,2)

本試験は、補体阻害剤未治療で抗AChR抗体陽性の成人(18歳以上)全身型MG患者175例(日本人患者13例を含む)を対象とした第Ⅲ相二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間比較多施設共同試験です。

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最長4週間のスクリーニング期、26週間の二重盲検ランダム化比較期、最長2年間の非盲検延長期から構成されます。
・ランダム化比較期:ユルトミリス®群はDay 1に体重に基づく初回用量、Day 15及びそれ以降は8週間隔で体重に基づく維持用量のユルトミリス®を盲検下で投与し、プラセボ群はDay 1、Day 15 及びそれ以降は8週間隔で、プラセボを盲検下で投与。
・非盲検延長期:ランダム化比較期終了時であるDay 183(26週時)の評価後に、ユルトミリス®群は900mgのユルトミリス®を、プラセボ群は体重に基づく初回用量のユルトミリス®をいずれも盲検下で投与し、Day 197(28週時)以降は全ての患者に8週間隔で体重に基づく維持用量のユルトミリス®を非盲検下で投与。

臨床試験の詳細をまとめたパンフレットがあります。ご参照ください

引用
1)社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2)Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
全身型MG患者を対象とした臨床効果は いつ頃からみられますか?

ユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、補体阻害剤未治療の抗AChR抗体陽性の成人全身型MG患者を対象に、MG-ADLなどの改善に基づいて、ユルトミリス®の有効性をプラセボと比較評価しました(→詳細な試験デザインについては「Q:MG患者を対象とした臨床試験について教えてください」を参照)1,2)

ランダム化比較期(26週間)において、主要評価項目であるMG-ADL総スコアのベースラインから26週時までの変化量(最小二乗平均値)は、ユルトミリス®群で-3.1、プラセボ群で-1.4であり、ユルトミリス®群でプラセボ群と比較して有意な改善が認められました[最小二乗平均値の差:-1.6、p=0.0009(制限付き最尤法に基づく反復測定混合効果モデル)]。ユルトミリス®群におけるMG-ADL総スコアの改善は投与開始後1週目から認められ、ベースラインから1週時までの変化量(最小二乗平均値)はユルトミリス®群で-1.7、プラセボ群で-0.9でした。

なお、ランダム化比較期における有害事象の発現割合はユルトミリス®群では90.7%(78/86例)、プラセボ群では86.5%(77/89例)でした。主な有害事象は頭痛であり、ユルトミリス®群では18.6%(16/86例)、プラセボ群では25.8%(23/89例)に認められました。重篤な有害事象の発現割合はユルトミリス®群で23.3%(20/86例)、プラセボ群で15.7%(14/89例)であり、主な重篤な有害事象はユルトミリス®群でCOVID-19肺炎、一過性脳虚血発作(各2例、2.3%)、プラセボ群では重症筋無力症(3例、3.4%)、蜂巣炎(2例、2.2%)が認められました。有害事象による投与中止例はユルトミリス®群で2例(COVID-19肺炎、感染性皮膚潰瘍が各1例)、プラセボ群で3例(注入に伴う反応が2例、背部痛が1例)に認められました。死亡はユルトミリス®群で2例(COVID-19肺炎、脳出血が各1例)に認められ、プラセボ群では認められませんでした。

* ベースラインでのMG-ADL総スコアを固定共変量として組み込んだ。

引用
1)社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2)Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

調製・投与方法

Q
ユルトミリス®はどのような患者さんに投与すればよいですか?

ユルトミリス®の効能又は効果は、「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」です。

効能又は効果に関連する注意は、以下のとおりです。
本剤は、抗AChR抗体陽性の患者に使用すること。
本剤は、ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に、以下に示す患者への投与を考慮すること。
・免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法を施行しても症状の管理が困難な患者
・合併症や副作用等により、免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法の施行が困難な患者

Q
抗AChR抗体を測定せずに投与してもよいですか?

投与できません。

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]は、抗AChR抗体陽性の患者さんを対象に実施されました1,2)。抗AChR抗体陽性でないMG患者さんを対象としたユルトミリス®のエビデンスは十分ではないため、ユルトミリス®の投与前には抗AChR抗体を測定し、抗AChR抗体が陽性であることを確認してください。

ユルトミリス®の効能又は効果については、「ユルトミリス®はどのような患者さんに投与すればよいですか?」を参照してください。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®はどのように調製すればよいですか?

ユルトミリス®は以下の手順で調製します。希釈前に、変色、微粒子、沈殿等がないことを目視にて確認し、異常が認められた場合は使用しないでください。
1)滅菌シリンジでバイアルから必要量を抜き取り、日局生理食塩液を用い、点滴バッグ等で本剤を希釈します。本剤1バイアルの希釈に必要な日局生理食塩液の量及び希釈後の本剤の濃度は下表を参考にしてください。

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2)濃度の異なる製剤(ユルトミリス点滴静注300 mgとユルトミリスHI点滴静注300 mg/3 mL及び1100 mg/11 mL)を混合して使用しないでください。
3)希釈液を含有する点滴バッグ等を静かに倒立させるなど、緩やかに溶解し、混和してください(抗体蛋白が凝集するおそれがあるため、激しく振らないでください)。
4)調製後、変色、微粒子、沈殿等がないことを目視にて確認し、異常が認められた場合は使用しないでください。
5)調製後は速やかに投与してください。調製した溶液を直ちに使用しない場合は、2~8℃での保存では24時間以内、常温保存では6時間以内(ユルトミリス点滴静注300 mg)又は4時間以内(ユルトミリスHI点滴静注300 mg/3 mL及び1100 mg/11 mL)に使用してください。
6)本剤のバイアルは1回使い切りです。バイアル中の未使用残液は適切に廃棄してください。

ユルトミリス®の調製・投与法をまとめたパンフレットがあります。ご参照ください。
「全身型重症筋無力症(gMG)におけるユルトミリス®点滴静注300 mg(10 mg/mL)の投与方法」
「全身型重症筋無力症(gMG)におけるユルトミリス®HI点滴静注300 mg/3 mL及び1100 mg/11 mL (100 mg/mL)の投与方法」

Q
ユルトミリス®はどのように投与すればよいですか?

全身型MGに対するユルトミリス®の用法及び用量は、以下のように定められています。

【用法及び用量(抜粋)】
〈全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)〉
通常、成人には、ラブリズマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1回2,400~3,000 mgを開始 用量とし、初回投与2週後に1回3,000~3,600 mg、以降8週ごとに1回3,000~3,600 mgを点滴静注する。
1 回あたりの本剤の投与量は、下表を参考にすること。 

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注)本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌に対するワクチンを接種すること(→詳細は「Q:髄膜炎菌ワクチンの接種を行わずにユルトミリス®の投与は可能ですか?」を参照)。

Q
髄膜炎菌ワクチンの接種を行わずにユルトミリス®の投与は可能ですか?

ユルトミリス®の投与により、髄膜炎菌感染症を発症することがあります。類薬であるソリリス®では、髄膜炎菌感染症による死亡例が報告されています。

このため、緊急な治療を要する場合を除いて、原則、本剤の投与の少なくとも2週間前に髄膜炎菌に対するワクチンを接種してください。なお、免疫抑制状態の患者さんに対しては、髄膜炎菌ワクチン(ACWY型)を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、また5年ごとに追加接種することが推奨されています1)

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なお、全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]2,3)は、髄膜炎菌ワクチン接種下で実施されました。

引用
1) 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/vaccine-guideline_03(4).pdf(2022年7月アクセス)
2) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
3) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
他のMG治療薬(抗コリンエステラーゼ薬、経口ステロイド薬、カルシニューリン阻害薬、IVIg)とユルトミリス®は併用してもよいですか?

他のMG治療薬とユルトミリス®の併用は可能です。全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、スクリーニング来院時に免疫抑制療法(IST)を受けていた患者さんも試験期間中に継続してISTを受けることができました1,2)。また、試験期間中、臨床的悪化が認められた患者さんには、レスキュー治療として高用量コルチコステロイド、血液浄化療法、免疫グロブリン静注療法(IVIg)が許容されました。

注)本邦では一部の免疫抑制薬及び免疫グロブリン製剤にはMGの適応はありません。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®投与中に免疫グロブリン静注療法(IVIg)を行った場合、投与量の調整は必要ですか??

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、試験期間中、臨床的悪化が認められた患者さんには、レスキュー治療としてIVIgの施行が許容されました1,2)。しかしながら、IVIgによりユルトミリス®の血清中濃度が低下することから、全身型MG患者さんへのユルトミリス®投与中にIVIgを施行する必要がある場合は、IVIg施行後4時間以内に、下表を参考に本剤の補充投与を考慮してください。なお、下表はシミュレーション結果に基づいて設定されたものですので、補充投与後は患者さんの状態を慎重に観察してください。

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注)本邦では一部の免疫グロブリン製剤にはMGの適応はありません。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®投与中に血液浄化療法を行った場合、投与量の調整は必要ですか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、試験期間中、臨床的悪化が認められた患者さんには、レスキュー治療として血液浄化療法の施行が許容されました1,2)。しかしながら、血液浄化療法によりユルトミリス®の一部が除去されることから、全身型MG患者さんへのユルトミリス®投与中に血液浄化療法を施行する必要がある場合は、血液浄化療法施行後4時間以内に、下表を参考に本剤の補充投与を考慮してください。なお、下表はシミュレーション結果に基づいて設定されたものですので、補充投与後は患者さんの状態を慎重に観察してください。

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引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®投与期間にレスキュー治療を行った場合、ユルトミリス®はどのように投与すればよいですか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]におけるレスキュー治療及び補充投与に関する規定に準じて1,2)、ユルトミリス®投与予定日に血液浄化療法又は免疫グロブリン静注療法(IVIg)を実施する場合は本剤投与前に実施し、その場合には本剤の補充投与は行わず、血液浄化療法又はIVIg終了後4時間以内に規定の用法及び用量で本剤を投与してください。

注)本邦では一部の免疫グロブリン製剤にはMGの適応はありません。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®の補充投与を行った場合、薬物動態への影響はありますか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]において、13例[ランダム化比較期:7例、非盲検延長期:9例(うち3例はランダム化比較期にも実施)]の患者で、血液浄化療法又は免疫グロブリン静注療法(IVIg)が施行され、その全例で本剤の補充投与が実施されました1.2)。血液浄化療法又はIVIgの施行により血清中本薬濃度は減少しましたが、本剤の補充投与により血清中本薬濃度は回復し、治療標的閾値(175 μg/mL)以上の血清中本薬濃度が維持され、当該試験で安全性が確認されている最大血清中本薬濃度(2,720 μg/mL)を超えることはありませんでした。補充投与による新たな有害事象の発現又は悪化も認められず、11例の患者で症状の改善が認められました。

注)本邦では一部の免疫グロブリン製剤にはMGの適応はありません。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

Q
ユルトミリス®投与はいつまで続ければよいですか?

基本的にユルトミリス®は根治させる薬剤ではないため、リスクベネフィットを考慮し、投与継続の必要性をご判断ください。

なお、全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、ほとんどの治療反応例で投与開始18週後までに症状の改善が得られました。投与開始18週後までに症状の改善が認められない患者さんでは、リスクベネフィットを考慮し、本剤の投与中止を検討してください。

<参考>全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験(CHAMPION試験)では、ユルトミリス®投与開始後12週までに最初の臨床的改善(MG-ADL総スコアのベースラインから3ポイントの改善、又はQMG総スコアのベースラインから5ポイントの改善)が認められた早期レスポンダーは、MG-ADL総スコアで68.5%、QMG総スコアで49.5%で、12週を超えて最初の臨床的改善を認めた後期レスポンダーはそれぞれ9.9%、10.8%でした。ユルトミリス®は初回投与、2週後、以降は8週ごとに投与し、来院に合わせて患者の症状改善を確認することが可能であるため、治療効果の判断は18週の投与来院時までに行うことが妥当と考えられます。したがって、投与開始後18週までに症状の改善が認められない患者では、本剤の投与中止を検討してください。

※電子添文1)では初回投与を0週と数えているため、18週後と記載されています。

引用
1) ユルトミリス®電子添文 2022年8月改訂(第6版、効能変更)

Q
ソリリス®からユルトミリス®に切り替える場合、どのようにしたらよいですか?

ソリリス®からユルトミリス®に切り替える場合、ユルトミリス®の初回投与はソリリス®の最終投与から2週後に行ってください。その後は8週間に1回の投与を繰り返します。投与量は、体重に基づいて以下の通り設定してください。

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Q
ユルトミリス®を投与される患者さんにはどのような説明をすればよいですか?

患者さんには、「ユルトミリス®の効果」、「ユルトミリス®を使う前に確認すべきこと」、「ユルトミリス®の使い方」、「ユルトミリス®投与中に気をつけなければならないこと」、「起こり得る副作用と主な症状」などを説明してください。

説明用のパンフレット等が作成されていますので、ぜひご活用ください。
医師向け
ユルトミリス®適正使用ガイド(RMP資材)
患者説明用(ICツール)
全身型重症筋無力症(全身型MG)– ユルトミリス®を投与される患者さんへの説明ガイド
患者さん提供用
全身型重症筋無力症(全身型MG)患者さんへ~ユルトミリス®治療で気を付けてほしいこと(RMP資材)
ユルトミリス®による治療を開始する全身型重症筋無力症(全身型MG)患者さんへ

特に注意喚起する必要があるのは、ユルトミリス®投与により、髄膜炎菌感染症、淋菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌などに罹患しやすくなることです。特に、髄膜炎菌感染症が発症した場合には急激に重症化し死亡に至ることがあります。

このため、本剤投与中の患者さんに対しては、重篤な感染症に罹患する可能性及びそれに関連する以下の徴候、症状について説明し、患者さんの意識を高めてください。

<髄膜炎菌感染症が疑われる注意が必要な症状>
初期症状は、以下のような一般的な風邪やインフルエンザの症状と区別がつきにくい場合があるので注意が必要です。
・発熱
・頭痛
・吐き気、嘔吐
・筋肉の痛み
その他、髄膜炎菌感染症には以下のような症状があります。
・錯乱(混乱して考えがまとまらない、物事を理解できない)
・うなじのこわばり(首の後ろが硬直しあごを傾けられない)
・発疹、出血性皮疹(赤や紫色の斑点状の発疹)
・光に対する過剰な感覚(光が異様にギラギラ輝いて見える、異常にまぶしく感じる等)
・手足の痛み

また、本剤投与中の患者さんに患者安全性カード(RMP資材)を渡して、常に携帯する必要があること、受診した医療従事者に提示する必要があることを説明してください。患者さんには、患者安全性カードに記載の「髄膜炎菌感染症が疑われる注意が必要な症状」(上記)のいずれかを認めた場合や感染症にかかったかもしれないと思ったら、直ちに担当医師の診察を受けるよう指導してください。

なお、担当医師と連絡が取れない場合にはすぐに救急車を呼び、患者安全性カードを救急救命室のスタッフに提示するよう指導してください。

安全性

Q
どのくらいの患者さんで髄膜炎菌感染症が発症しますか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]において、試験期間中に髄膜炎菌感染の報告はありませんでした1,2)。一方、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)又は視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する臨床試験において、髄膜炎菌感染症が5例報告されています。臨床試験におけるユルトミリス®への曝露は全世界で約2,449人年であり、これは全世界で100人年あたり0.20の報告率となります3)

また、2021年12月31日時点の製造販売後安全性情報では、ユルトミリス®への曝露は全世界で約5,734人年であり、髄膜炎菌感染症は3例報告されています。これは全世界で100人年あたり0.05の報告率となります3)

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]
3) ユルトミリス® 適正使用ガイド(全身型重症筋無力症), p.4

Q
ワクチンを接種しても「髄膜炎菌感染症」が発症した例はありますか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]では、髄膜炎菌感染症の報告はありませんが1,2)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)又は視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者に対する臨床試験において、髄膜炎菌感染症が5例報告されています3)。また、2021年12月31日時点の製造販売後安全性情報では、髄膜炎菌感染症は3例報告されています。これら8例における髄膜炎菌感染症の血清型内訳は4例がY及びW135で(1例はいずれも陽性)、残り4例は血清型の分類不能、または血清型不明/未報告でした3)。なお、8例は全例でワクチン接種を受けていました。

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髄膜炎菌は莢膜多糖体の種類によって少なくとも13種類(A,B,C,D,X,Y,Z,E,W135,H,I,K,L)の血清型に分類され、原因菌としてはA,B,C,Y,W135が多く、特にA,B,Cが全体の90%以上を占めると言われています4)

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5.[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]
3) ユルトミリス® 適正使用ガイド(全身型重症筋無力症), p.4
4) 国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/405-neisseria-meningitidis.html(2022年7月アクセス)

Q
全身型MG患者を対象とした臨床試験ではどのような副作用が認められましたか?

全身型MGに対するユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]の60週データカットオフ日までに、169例中58例(34.3%)に副作用が認められ、主なものは頭痛(8.9%)、悪心(6.5%)、下痢(4.1%)等でした1,2)。このうち、国内症例は11例中4例(36.4%)に副作用が認められ、動悸、口角口唇炎、下痢、倦怠感が各1例でした。

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる

Q
「髄膜炎菌感染症」では、どのような初期症状が起こりますか?

髄膜炎菌感染による主な初期徴候は以下のとおりです。患者さんに髄膜炎菌性感染の徴候及び症状に関して啓発を行い、これらの徴候や症状が現れた場合は直ちに医師の診察を受けるよう指導してください。

<髄膜炎菌感染症が疑われる注意が必要な症状>
初期症状は、以下のような一般的な風邪やインフルエンザの症状と区別がつきにくい場合があるので注意が必要です。
・発熱
・頭痛
・吐き気、嘔吐
・筋肉の痛み
その他、髄膜炎菌感染症には以下のような症状があります。
・錯乱(混乱して考えがまとまらない、物事を理解できない)
・うなじのこわばり(首の後ろが硬直しあごを傾けられない)
・発疹、出血性皮疹(赤や紫色の斑点状の発疹)
・光に対する過剰な感覚(光が異様にギラギラ輝いて見える、異常にまぶしく感じる等)
・手足の痛み

Q
妊娠を希望している場合、ユルトミリス®投与中止後どのくらい避妊すればよいでしょうか?

明確な基準はありません。また、ユルトミリス®の遺伝毒性及びがん原性又は妊娠への影響を評価する動物実験は実施されていません。

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与してください。

Q
ユルトミリス®投与中に授乳してもよいですか?

投与中の授乳に関する安全性は確立しておりません。治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討してください。

Q
血管外漏出した場合、どのように対処すればよいですか?

ユルトミリス®は、約pH7の製剤です(ユルトミリス®点滴静注300 mgはpH7.0、ユルトミリス®HI点滴静注300 mg/3 mL及び1100 mg/11 mLはpH7.4)。ユルトミリス®には細胞毒性などの刺激作用はありませんので、血管外漏出が起きても、組織に対して障害を起こさないと考えられます。また、今まで血管外漏出による組織障害に関する報告はありません。もし、血管外漏出などが起きた場合は、ユルトミリス®投与を受けた施設ごとのガイドラインに沿った処置をしてください。

Q
「髄膜炎菌感染症」が発現した場合、ユルトミリス®の治療は中止するべきですか?

髄膜炎菌感染症に罹患している患者への本剤の投与は禁忌とされていますので、ユルトミリス®の治療を中止してください。

髄膜炎菌感染症が疑われる場合あるいは否定できない場合には、「直ちに診察を受け、適切な抗菌薬による治療が必要であること」を患者さん又はご家族(又は介護者)に説明してください。髄膜炎菌感染が疑われる場合あるいは否定できない場合には、十分に管理できる医師・医療機関のもとで、髄膜炎菌感染症の診断、治療に精通した医師との連携を取った上で治療にあたってください。

1)発症時の管理方法
ユルトミリス®投与中に発熱等が認められ髄膜炎菌感染症が疑われる場合あるいは否定できない場合には、血液培養を含む必要最低限の検査を実施した後、起因菌の判明を待たずに髄膜炎菌を標的とした抗菌薬*1)を投与開始し、起因菌が判明した後に適切な抗菌薬に変更してください。また、侵襲性髄膜炎菌感染症の場合には感染症法に基づく届け出が必要です2)。抗菌薬使用後の血液・髄液培養では、原因菌の同定が困難な場合があることをご留意ください1)

①髄膜炎が示唆される身体所見(頭痛、項部硬直等)が認められない場合
発症時に症状が軽度であっても髄膜炎菌感染症を念頭において必要な検査、早期の抗菌薬治療が必要です。敗血症の徴候がある場合には、早期の抗菌薬治療に加え日本版敗血症診療ガイドライン20203)等を参考に適切な全身管理、補助療法を実施してください。

②髄膜炎が示唆される身体所見が認められる場合
脳圧亢進による脳ヘルニアの徴候がない場合には髄液検査を実施する等、適切な検査、早期の抗菌薬投与を含めた治療にあたってください1)

2)脳ヘルニアの徴候を認める髄膜炎、あるいは敗血症が示唆される場合には集中治療室(ICU)との連携が必要な場合があることを念頭において治療にあたってください。

*細菌性髄膜炎診療ガイドライン20141)では、第三世代セフェム系抗菌薬(例:セフォタキシム、セフトリアキソン等)の抗菌薬療法が推奨されています。

 セフォタキシム:2.0 g・4~6時間ごとに静注又は点滴静注(1日最大投与量12 g、保険適用は4 g)
 セフトリアキソン:2.0 g・12時間ごとに静注又は点滴静注(1日最大投与量4 g)

用法及び用量については最新の製品電子添文をご参照ください。

引用
1) 細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員会 編.細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014, 南江堂, 2014.
2) 厚生労働省. 感染症法に基づく医師の届出のお願い, 12 侵襲性髄膜炎菌感染症
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-09-01.html(2022年7月アクセス)
3) 日本版敗血症診療ガイドライン2020:The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock2020
(J-SSCG2020)

Q
髄膜炎菌感染症以外に、ユルトミリス®投与患者で注意すべき感染症はありますか?

ユルトミリス®は補体C5の開裂を阻害し、終末補体複合体C5b-9の形成を抑制すると考えられます。C5b-9はナイセリア属細菌への感染防御にも関与していることから、特に髄膜炎菌に感染しやすくなるだけでなく、淋菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌等にも感染しやすくなると考えられています。

臨床試験における発現状況1)

2021年12月31日時点の臨床試験では、ユルトミリス®への曝露は全世界で約2,449人年であり、髄膜炎菌以外のナイセリア属細菌による感染症は1例(淋菌:1例)報告されています。これは全世界で100人年あたり0.04の報告率となります。肺炎球菌による感染症は2例(肺炎球菌性肺炎及び肺炎球菌感染:各1例)報告されています。これは全世界で100人年あたり0.08の報告率となります。なお、インフルエンザ菌感染の報告はありません。

製造販売後の報告状況1)

2021年12月31日時点の製造販売後安全性情報では、ユルトミリス®への曝露は全世界で約5,734人年であり、髄膜炎菌以外のナイセリア属細菌による感染症は5例(淋菌:4例、その他のナイセリア属細菌:1例)報告されています。これは全世界で100人年あたり0.09の報告率となります。なお、肺炎球菌感染及びインフルエンザ菌感染の報告はありません。

引用
1) ユルトミリス® 適正使用ガイド(全身型重症筋無力症), p.19.

Q
中和抗体(抗薬物抗体)産生の報告はありますか?

ユルトミリス®はヒト化モノクローナル抗体であり、モノクローナル抗体薬投与時には抗薬物中和抗体及び抗薬物抗体の産生により、モノクローナル抗体薬のクリアランスが上昇又は低下し、薬剤のピーク血清中濃度や半減期に影響を及ぼす可能性があります。このため、ユルトミリス®の臨床試験では抗薬物中和抗体等の産生が注意深く観察されました。

全身型MG患者を対象としたユルトミリス®の国際共同第Ⅲ相試験[MG-306試験(CHAMPION試験)]において、60週データカットオフ日までのいずれかの時点にて、本剤投与下で抗体産生が認められた患者はみられませんでした1,2)

引用
1) 社内資料:補体阻害剤未治療の全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ALXN1210-MG-306)(承認時評価資料)
2) Vu T, et al. NEJM Evid. 2022; 1(5).[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticalsの支援のもと実施された。
本論文の著者にAlexion, AstraZeneca Rare Diseaseの社員が含まれる]

その他

Q
ユルトミリス®はどのように保存すればよいですか?

ユルトミリス®は、遮光し、凍結を避け、2~8℃で保存してください。なお、やむを得ず調製した溶液を直ちに使用しない場合は、ユルトミリス®点滴静注300mgは2~8℃での保存では24時間以内、又は常温保存では6時間以内に使用し、ユルトミリス®HI点滴静注300 mg/3 mL及び1100 mg/11 mLは2~8℃での保存では24時間以内、常温保存では4時間以内に使用してください。

Q
ユルトミリス®とソリリス®は何が違いますか?

ユルトミリス®とソリリス®は、主に以下の点が異なります。
・作用機序:ユルトミリス®はソリリス®と同様、補体C5に高い親和性をもって特異的に結合し、C5a(炎症誘発性アナフィラトキシン)及びC5bへの開裂を阻害し、C5b-9からなる膜侵襲複合体(MAC)の形成を抑制します1,2)。ユルトミリス®は、これらの作用がソリリス®と比べて長時間持続することが特徴です(→詳細は「Q:ユルトミリス®は、なぜ長時間作用するのですか?」を参照)。
・投与スケジュール:ソリリス®は週1回の投与を4回行い、以降は2週に1回投与します。一方、ユルトミリス®は、初回投与から2週後に1回、その後、8週(約2ヵ月)ごとに投与します(→詳細は「Q:ユルトミリス®はどのように投与すればよいですか?」を参照)。
・投与量:ソリリス®は投与量が決まっていますが、ユルトミリス®は患者さんの体重によって投与量が異なります(→詳細は「Q:ユルトミリス®はどのように投与すればよいですか?」を参照)。
・医療費:投与スケジュールや投与量、薬価が異なりますので、医療費も変わります。患者さんによって受けられる助成制度が異なりますので、詳細は患者さんが居住している自治体への確認が必要です。

引用
1) Holguin MH, et al. J Clin Invest. 1989; 84(1): 7-17.
2) 社内資料:ラブリズマブのC5及びFcRnとの結合に対するpHの効果